ゾウさん管弦楽団の音楽便り「楽器をやめるとき」

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┃ ★音楽家からのメッセージ★
┃ 「楽器をやめるとき」
┃ コントラバス奏者・井口信之輔

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===「楽器をやめるとき」===

 
こんにちは、コントラバス奏者の井口信之輔です。
 
このメルマガの読者には「これから子どもに楽器を習わせてあげたい」と考えている人が多いと思いますが、今回は「楽器をやめる」ときのおはなしです。
 
中高の吹奏楽部を指導する者としての僕の主観ですが、これからの習い事をより良い体験にするための参考になればと思います。
 

音楽に限らず習い事をしていれば、どこかで「やめどき」が訪れます。進学や受験、就職、他に興味のあるものができた・・・区切りをつけようと本人は決めたのに、周りの人がつい言ってしまうのが「今まで続けたのにもったいない」という言葉。
 

「高い楽器も買ったのに『もったいない』」
「10年続けたのに『もったいない』」
「ここまで上達したのに『もったいない』」
 

・・・本当に「もったいない」のでしょうか?
 

これはひとつの見方ですが、誰かが楽器をやめようとするとき、他者から見ると、新品の楽器やレッスンに費やした時間など「楽器のために投じたもの」から見返りを得られていないように思えるから、ではないでしょうか?だから「良かれ」と思ってつい口に出てしまうのだと思います。
 

でも、言われた本人には嬉しくない言葉です・・・そんな経験はありませんか?
 

何かの賞や点数だけが音楽の見返りではありません。
どんなレベルで、どんなタイミングで楽器をやめても、それまでの過程で素晴らしいものを得ていると僕は思っています。
 

たとえば楽器を習うことで初めて知った音楽もあるだろうし、好きな作曲家を見つけるかもしれません。難しい技術を習得したり、発表会など人前で演奏することによって自信がついたり、憧れの曲を演奏した喜びなど、楽器を習う過程で得た原体験は練習をやめてもいつまでも心に残ります。「もったいない」なんてことはありません。
 

これまで吹奏楽部で中高生を指導し、たくさんの子供たちが卒業していきました。卒業や進学を境に楽器をやめた子も少なくありません。楽器をやめたことは悲観することでも非難することでもありません。楽器の練習はしなくなったけど音楽を聴くのは変わらず好きだから今はコンサートを鑑賞するのが楽しい、という子もいますし、楽器や音楽とは全く違う新しい世界で打ち込めるものを見つけた子もいます。僕も卒業していく子供たちには「やりたくなったらまたやれば良い。今までと違う新鮮さがあるから。」と伝えています。
 

もしもお子さんがこれから楽器のレッスンをはじめて親の期待より早くやめたとしても、「もったいない」とは言わないであげてください。新しい経験が増えたらその分、人生が豊かになります。興味や関心が変わっていくのは成長している証なんだと僕は考えます。
 

大きくなってなってまた楽器に興味を持つことだってありますし、若いうちは身体が楽器の演奏を憶えているものです。
 


 
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